画期的な分離技術

25 Dec 2023

GEA 従業員 - 分離機

GEA 遠心分離機の歴史は、フランツ・ラメゾールとフランツ・シュミットが特許を取得した機械式ミルクセパレーターの生産を開始した1893年に始まり、これを機に近代的な乳製品加工への道が切り開かれることとなりました。この技術革新は、19世紀末のドイツで増え続ける都市人口にいかにミルクを供給するかという、当時の大きな課題を克服するのに役立ちました。そして、活況を呈する乳業業界に拍車をかけることにもなるのです。1913年までには、ドイツ国内で遠心分離機を製造する会社が67社にまで増加し、その多くはエルデの工場付近に位置していました。130年にわたり分離技術をリードしてきたGEAは、現在も遠心分離機について再考を続けています。

ラメゾールとシュミットの独創的な躍進以上に印象的なのは、このような厳しい競争に直面しながらも成長を続けたという事実かもしれません。1941年に「Westfalia Separator」と命名された同社は、1994年にはGEAグループに組み込まれます。その時点で、Westfalia Separator 社は世界中で1,000件以上の特許を所有し、さまざまな産業向けに210種の機器を発明していました。今日では、153カ国にて約15万台のハイテク遠心分離機を提供しています。

どこであろうと要請に応じて

ラメゾールとシュミットはさぞかし誇りに思っていることでしょう。今日では、GEA は世界の遠心分離機市場をリードする企業の1つとなっており、GEA の分離技術も今や酪農分野にとどまりません。液体の処理が必要になる場合や、液体から固体を分離する必要がある場合は、どこであろうと GEA の遠心分離機が製造工程の中心でその能力を発揮します。

技術革新が欠かせない製薬・化学業界においても、ワクチン開発、血液処理、タンパク質の回収、化学・鉱物処理といった分野において、GEA の遠心分離機が世界中で重要な役割を果たしています。再生可能な資源の分野では、GEA の遠心分離機は、オリーブ油からエンドウ豆のタンパク質、さらには製紙、繊維、建材用の工業用でんぷんにいたるまで、あらゆる種類のプラントベース製品の生産において主要な役割を果たしています。そして飲料業界では、GEA の分離技術により、ビールやフルーツジュース、そして今日増加しつつあるプラントベース飲料の高収率、最適な衛生純度、高級感のある味が保証されているのです。

それだけではなく、GEA 遠心分離機はその他の分野においても、より良い世界の実現に貢献。工業用であれ家庭用であれ、廃水の洗浄や汚泥の処理などに使用されています。また、原油から水分や塩分を除去する際にも大活躍。さらに、バイオエタノール製造用原料の処理にも使用されているほか、船舶の燃料油や処理水のリサイクル、安全な廃棄にも役立っています。このように、GEA の分離技術は合計約3,500件の用途で使用されています。

お客様がリードを保てるようサポート

ステファン・ペコローニ氏は、プロセス技術・イノベーション担当副社長であり、セパレーターとデカンタの製造を含む GEA の分離・フロー技術(SFT)部門で持続可能性を担当しています。ペコローニ氏は、GEAの遠心分離機が成功を収めたのは、技術革新に注力し、時代とともに進化する課題にうまく対応しながら、顧客が時代の先端を行くことができるようサポートしてきたためであると考えています。

「非常に根本的なところでは、遠心分離機を使用することで、機械的分離によって低価値の材料を高価値の製品に変換することができるんです。もちろん、優れた遠心分離機を使用すれば、生産性が向上します」。「また、お客様の収益、CO2バランス、エコバランスを改善する方法で、サイドストリームから貴重な原料を回収する必要があります」と同氏は説明します。そして2023年、こういった時代の先端を行く遠心分離機では、データとデジタル化の力が活用されるようになるため、お客様は継続的に性能を最適化し、機械の総所有コストを削減できるようになります。ペコローニ氏が指摘するように、資格を持つ人材が不足している今日、この点はより重要になってきます。「今日のお客様は、効率と持続可能性を最大化するだけでなく、従業員のトレーニングや専門知識レベルに依存せずに優れた性能を発揮する遠心分離機を必要としているんです」と同氏。最近では、遠心分離機自体がスマートである必要があり、自己最適化も可能となっているのが理想的なのです。

次世代の最適化

GEA の Intellicant ソリューションはまさにそういったソリューションです。廃水処理に使用されるデカンタ遠心分離機に「目と耳」を追加したようなものです。センサーで収集されたデータが、現場で仮想オペレーターとして機能するAIソフトウェアに供給されるようになっています。このシステムは、固形物の回収率を最大化する上で、手動オペレーターよりも優れていることがすでに証明されています。Intellicant はまた、お客様のニーズに応じて、機械の消費電力を最小限に抑えたり、洗浄剤などの投入量を減らしたり、遠心分離機の寿命を延ばしたりするために使用することもできます。

食品業界において、GEA は複雑さをよりうまく管理するためにAIを活用しています。「食品の製造ではばらつきの多い生物学的な原材料を扱っているため、ビッグデータへのアプローチに加え、異なる場所や異なる原材料からデータセットをアップロードするという能力が役に立つのです」と説明するペコローニ氏。その説明通り、AIが学習することでより効率的な分離工程が実現し、ロスを減らして生産性を向上させ、お客様により安定した予測可能な結果をもたらすことができるのです。

「デジタル化とデータによって、これらの機械を次のレベルに引き上げると同時に、当社の専門知識と提供できるサービスを拡大することができるのですから、エキサイティングですよ」と同氏は言葉を続けます。今日 GEA と遠心分離機のお客様との間で締結されている典型的なサービスレベル契約では、GEA が機械のメンテナンスを担当し、時間の90%を利用できるようにするとともに、安全運転を確保するよう規定されている可能性があります。「デジタルソリューションにより、遠心分離機が利用可能になるだけでなく、指定の基準において生産性を確保する新しいプロセスレベル契約が可能になるんです」とペコローニ氏。「これは未来の方法であり、お客様にとって価値の高いものです」。

「今日のお客様は、効率と持続可能性を最大化するだけでなく、従業員のトレーニングや専門知識レベルに依存せずに優れた性能を発揮する遠心分離機を必要としているんです。最近では、遠心分離機自体がスマートである必要があり、自己最適化も可能となっているのが理想的なのです」- ステファン・ペコローニ氏、GEA プロセス技術・イノベーション担当副社長

- ステファン・ペコローニ氏、GEA プロセス技術・イノベーション担当副社長

例えば、GEA Intellicant チームは、廃水処理中に回収される乾燥物質の「ケーキ」の量が1%増加すれば、国にもよるものの、年間6万ユーロの節約になると見積もっています。ペコローニ氏は、未精製食用油業界において、1日に800トンの油を処理する会社の例を挙げて説明します。「製品ロスを1%削減するということは、年間320日稼働する工場で1日あたり6,400ユーロの節約になります。運転寿命が20年から25年であると仮定すると、この数値はお客様にとって大きな意味を持ちます」

15万台以上におよぶ GEA 遠心分離機の耐用年数にわたって一貫して実現可能なデジタルソリューションによる効率の向上は、GEA の気候目標にも大きな影響を与えることになります。「GEA の気候変動に関連する排出量の大部分は、製品使用時にお客様のもとで発生するため、スコープ3が適用されます」「これら排出量の削減は、2040年のネットゼロ目標を達成するために不可欠なんです」と同氏。

しかし、データとデジタル化によって効率が向上しても、GEA のエンジニアは、持続可能性におけるより根本的な突破口を見出すため、まったく新しい設計に取り組んでいます。そのひとつが、低速で作動しつつも同じ分離性能を発揮する大型の遠心分離機、新シリーズの「ビッグボウル」セパレーターの開発です。このような GEA のプロジェクトでは、消費電力を45~70%削減することができます。まさにEUの目標や GEA 自身の気候変動目標を達成するための重要なステップである、とペコローニ氏は続けます。「ただ、エンジニアとしての私たちの仕事は、こういった画期的なソリューションがお客様にとって費用対効果の高いものであり続けるようにすることなんです」

「デジタル化とデータによって、これらの機械を次のレベルに引き上げると同時に、当社の専門知識と提供できるサービスを拡大することができるのですから、エキサイティングですよ」- ステファン・ペコローニ氏、GEA プロセス技術・イノベーション担当副社長

- ステファン・ペコローニ氏、GEA プロセス技術・イノベーション担当副社長

変化に対応

ラメゾールとシュミットによる手動式遠心分離機は、当時の生乳分離に革命を起こすのに十分な威力を発揮しました。今日、GEA のハイテク遠心分離機は最大20,000g(重力の20,000倍)の力を発揮します。それでも、2023年にお客様がリードを保てるような技術を提供するためには、ステンレス鋼だけでは十分ではありません。20年~25年の製品ライフサイクルにわたる付加価値サービス、機械を大規模な製造工程に効果的に統合するためのノウハウ、デジタル化とデータを活用した性能の最適化、資源の使用を最小限に抑えるための的を絞ったソリューションなどが必要となります。 

「当社の製品のひとつに船舶用セパレーターがあります」とペコローニ氏。「20年後の海運業界はどうなっているでしょうか。はっきりとは分かりません。しかし、より持続可能なプロセスと経済性に対する新たなニーズ、新たな需要が生まれるでしょう。これこそが当社の遠心分離機にとって最も大切なことなのです。そして、当社の総合的なアプローチは、お客様や業界、課題に関係なく、最高の品質、最も費用対効果の高い、持続可能なソリューションを提供し続けることを意味しています」

ヴァネッサ・ヴェヴァー

GEA の若手エンジニアが分離技術の進歩を推進

GEA の遠心分離機には、シミュレーションモデルやIoTデータ、3Dモデル、材料リストなど、デジタルツイン構成要素の一部がすでに導入されています。次のステップは、それらをすべて統合してデジタルツインを作成し、異なるITシステム間での通信を可能にすることです。そのためには、より多くのインターフェイスが必要になります。「それができれば、データの接続が可能になるんです。そして、そこから機械の気候への影響を測定し、効率を高めて、特に GEA とお客様にとって重要なスコープ3の排出量の削減に役立つソリューションに取り組むことができます。これは、AIや機械学習、デジタルツインのようなデジタル技術なしには不可能です」

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